【論】 特許異議申立の成立可能性(2)
前回に引き続き、異議申立成立の可能性について探ってみます。
制度構造とは別に、現在の情報提供制度及び特許無効審判制度から、異議申立成立の可能性を探ります。
情報提供制度とは、第三者が特許庁に対し、特許出願に係る発明に関する先行技術文献等を提出できる制度です。
2003年の異議申立制度の廃止後、第三者が特許審査に関与できる制度として活用されてきました。
そこで、まず、以下の調査①を実施することにより、情報提供制度の有効性を検討してみました。
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調査①
出願日が2004年1月1日から2013年12月31日までの特許出願について、情報提供の有無による特許査定率を算出した。
結果、情報提供がなされているものの特許査定率は57.2%であったのに対し、情報提供がなされていないものの特許査定率は69.4%であった。
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調査①の結果から、情報提供が有った場合に登録査定率は低くなっています。対象とする特許出願に対して特許査定を阻止したいのであれば、情報提供は有効であるといえるのかもしれません。
次に、情報提供の有無別に、その後特許無効審判が請求された特許の権利状況について調べるべく、以下の調査②を実施しました。
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調査②
出願日が2004年1月1日から2013年12月31日までであり、かつ、特許査定がなされたもののうち、特許無効審判の請求がされた特許について、情報提供の有無別の審決の傾向を調査した。
結果、情報提供がなされた特許について、特許維持審決がなされた割合は80.3%であった。
他方、情報提供がなされていない特許について、特許維持審決がなされた割合は79.4%であった。
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調査②の結果から、情報提供の有無は、特許維持審決に寄与しない可能性があることがわかりました。これにより、例え審査段階で情報提供をしたのに特許されたとしても、特許無効審判を請求することにより特許を無効とする可能性は十分にあるといえるのかもしれません。
以上の調査①及び②から考えますと、対象とする特許出願の特許査定を阻止したいのであれば、まず情報提供を利用することが肝要かと思われます。
そして、情報提供をしたとして、それでも特許になった場合でも、(特許無効審判と同じく)特許庁審判官によって審理される特許異議申立をすることは十分に有効である、といえるのかもしれません。
ただし、前回の記事で述べた制度構造について理解しておくべきでしょう。
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