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【談】実務書の好み

専門家であれば、日々の研鑽が実務能力に直結します。

研鑽するための方法はいくつかあるのでしょうが、その中でも実務書を読むというのは条件付きで効率的です。

その条件というのは、実務書に目的に沿った内容が載っていること。

当然といえば当然ですが、実務書の想定している読者に自分が含まれていない場合は、例え良書といえるものでも、自分にとってはそうではないということになります。

私の考える実務書には主に3段階のものがあります。

1段階目のものはネットなどで集められる情報をまとめたものです。初心者に適した入門書といえるでしょう。

2段階目のものはいわゆるTipsがちりばめられたもの。実務をある程度経験した人の参考になるような実務指南書です。

そして、3段階目のものは著者の意見や主張に基づいて「こうすべき」という信念が感じられるものです。実務経験が豊富である人に、「こういう考え方・やり方もあるのか」という示唆を与えてくれるような実務書です。

どれがいいのかは、自分の知識や経験の質・量に依ってくると思います。

例えば、私が特許関係の実務書にあたるとき、1段階目のものや2段階目のものは物足りなく感じます。

そのような実務書が根本的に悪いというのではなく、そのようなものにあたった自分が悪いと思うようにしています。

ですので、特許関係の実務書については、アマゾンなどのネット通販で購入するということはほとんどなく、実際に書店に足を運んで内容を確認した上で、購入するようにしています。

もちろん、私が購入するのは3段階目のものです。

しかし、残念ながら、3段階目のものというのはなかなか目にすることができません。

著者である専門家が、自分の考えを開陳するというのはなかなかに勇気のいることです。

自分の考えが受け入れられなければ、現在又は将来のクライアントにそっぽを向かれる危険性があるからです。

ですので、自分の考えを惜しみなく記載した書籍というのは、大学などの学者先生が記載したものとなってしまいます。

しかし、このようなものは、実務書というよりも、学術書となってしまい、少し意味合いが違ってきます。

そんな中でも、ここまで自分の考えを述べるのはすごい、と思えるものもあります。

そういうものに出会えたときは、内容の正当性はともかくとして、その勇気に思わず感激してしまいます。

 

弁理士 森本 敏明

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