【論】 WIPO グローバル・イノベーション・インデックス 2016
WIPOのウェブサイトにて、「グローバル・イノベーション・インデックス 2016」が公開されています。
ランキングをみると、日本は16位。
1位はスイス、以下、スウェーデン、英国、米国、フィンランドと続きます。
ここで疑問に思うのが、1位のスイスと16位の日本との間にどのような差異があるのか、ということでしょう。
◇ ◇ ◇
本インデックスは大きく7つの大項目に分けられ、それぞれの項目ごとに評価されています。
スイスと日本に、米国を加えた項目ごとの評価は以下のとおりです。
項目 | スイス(位) | 米国(位) | 日本(位) |
1. Institutions | 9 | 17 | 15 |
2. Human capital & research | 6 | 14 | 13 |
3. Infrastructure | 15 | 13 | 7 |
4. Market sophistication | 7 | 1 | 8 |
5. Business sophistication | 3 | 11 | 10 |
6. Knowledge & technology outputs | 1 | 4 | 13 |
7. Creative outputs | 5 | 13 | 36 |
スイス・米国の2ヶ国に対して、目立つのは下2つの大項目「6」及び「7」のランキングです。
例えば、大項目「6」でいえば、「Computer software spending, % GDP」について、日本のランキングの低さが目立ちます。
この意味として、投資項目にソフトウェアは入りにくい、ということが考えられます。
確かに、ハードウェアは稟議が比較的通りやすく予算化しやすいが、ソフトウェアはそれほどでもないという風潮が日本にはあるのかもしれません。
また、大項目「6」及び「7」に共通して、ICTに関連する項目は日本のランキングが軒並み低いように見受けられます。
情報通信技術が発達しても、それによるサービスの輸出、ビジネスモデル・組織モデルの創造などがなされていないという評価でしょうか。
例えば、米国ではSnap chatなどのSNSはオフィスやビジネスの場で有効活用されているようですが、日本でのSNSといえば、プライベート的な使い方がメインなのかもしれません。
私どもでも、所内のコミュニケーションを円滑化するために、メールに代わるものとしてSNSの導入を検討しています。
◇ ◇ ◇
さて、その他の日本のランキングの低さが目立つのは、大項目「7」の「Cultural & creative services exports, % of total trade」でしょうか。
ガラパゴス化などと揶揄されていますが、内向きになるのは、言語的・地理的条件からしてある程度は仕方がないことのように思います。ちなみに米国は1位です。
他には大項目「7」の「Online creativity」のランキングの低さも目立ちます。
これには、労働者人口当たりの、ドメインの取得数、ウィキペディアの編集数、YouTubeのアップロード数が含まれます。
ウィキペディアに記載する意義や動画投稿サービスはYouTubeに限らないことはさておき、「グローバル」な視点からすると、これらは物足りないという評価です。
一方で、ドメインの取得数が少ないというのは、日本人は自ら作るよりも、企業の用意したウェブサービスを利用する場合が多いことを意味すると思われます。
ドメインに価値はあるのか、という議論にも結びつきますが、サービスの数だけドメインの数があるのだとすれば、ドメインの取得数は指標としての意味をなすのかもしれません。
◇ ◇ ◇
日本のランキングの低さが目立つ項目を挙げていきました。
最後に、総合ランキング16位というのは良いのか・悪いのかということに触れるとしても、その順位に意味はそれほど感じられません。
それよりも、上記に挙げた項目について注意を払うことに意義があるように思います。
ランキングの低い項目は、欠点とまではいかなくとも、他国に比べて不利な点であることは間違いないでしょう。
本インデックスは、国ごとの絶対的な評価というよりも、良いところ・悪いところを見出すための通知簿として利用することに価値があるように思われます。
弁理士 森本 敏明
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