【書籍】「科学嫌いが日本を滅ぼす」の感想
新潮社から発刊されている「科学嫌いが日本を滅ぼす 「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか」(著者:竹内薫)の感想です。
本書を手に取ったきっかけは、ジャーナル(雑誌)のNature、Scienceをもう少し詳しく知ろう、と思ったからです。
これらのジャーナルは科学界最高峰のものとして、今も君臨しています。
先日、弊所のお客様と、こんなやりとりがありました。特許出願をした後、「論文投稿の予定はありますか?」と聞いたところ、「はい、●●というジャーナルに投稿する予定です」との回答。そこで、「Nature、Scienceにチャレンジしませんか?」と聞いてみたら、「それらのジャーナルに載ればいいですねぇ」とのこと。
科学者であれば、一度は自分の論文を載せたいジャーナル。それが、Nature、Scienceです。
雑誌の影響力を測る指標として、Impact Factor (IF)があります。
Nature、ScienceのIFは40以上で、ジャーナル全体のトップ5に入ります。
ちなみに、日本産のジャーナルは1以下のものがほとんどです。
一言でいうなら、Nature、Scienceは権威のあるジャーナルということになります。
本書では、これら両誌の成り立ちや違いなどについてこと細かく記載されています。
最たる違いは、Natureは商業誌であり、Scienceは学会誌であるということ。
そのために、Natureは編集部の意向が強く反映され、時事的政治的なOpinionやReportが記載されます。自分としてはこれらが面白くて読んでいるようなものです。
本書は三部構成で、Nature、Scienceのことが記載されているのは第I部。
第II部は科学誌の問題点、いわゆる捏造問題について触れています。
この背景にあるのは科学者への過度のプレッシャーで、立身出世できる科学者は一握りであるという現実があります。これについてはまた別の機会にも触れたいと思います。
第III部は日本の科学事情にスポットを当てています。
本書は新潮社の雑誌の連載をもとにして書籍化されたものですが、連載中に東北大震災が起きました。
そこで、科学技術と福島原発の関係について触れています。
最後に、特別鼎談が載っています。この特別鼎談が非常に面白かった。
生命科学、宇宙理論科学を交えて議論されています。
禁断ともいえる、生き物の定義についても触れています。
私が学生のときは「自己複製」できるか否かがポイントでしたが、そうなると「ウイルスは?」ということになります。ウイルスは自己複製できません。
この鼎談の中では、生態系の環の中に入るものは生き物、という発言がありました。なるほどな、と。
こう考えると、ウイルスも生体内で複製するので生態系の輪の中に入り、生き物という位置付けになります。ただ、そうなると、ミトコンドリアや他の物質も生き物の範疇に入りそうです。
本書は、科学に興味のある人には愉しく読める一冊だと思います。
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弁理士 森本 敏明
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