【気付】相手の土俵に乗る
車を通じて、なるほどな、と思ったことについて。
昨日、車の部品を交換するために、ホンダのディーラーに行ってきました。
無事に部品交換が終わって、整備を担当してくれた整備担当者と車の前で立ち話をしました。
店内で座って話をするよりも、車の前で立ちながらの方がいろいろと話ができます。
その中で、新型ステップワゴンの話になりました。
発売されたのが5/27で、その日に試乗車がディーラーに届いたようです。
実は、我が家の自家用車もステップワゴンです。
購入したのは4年前で、現役バリバリです。
ただ、新しいモデルをみると、やはりときめくものがあります。
試乗はしませんでしたが、車内外を見させてもらいました。
外見は、一言で表すと、四角。かつて街中でよく見かけた2代目のモデルを彷彿とさせます。好みは分かれるのでしょうが、私としては好印象です。
旧型に比べると車内はずいぶんと広くなっています。2列目シートも良いのですが、3列目シートも座り心地が良くなっています。
全体的には良いのですが、一つ難点があります。
それは、「わくわくゲート」が無いこと。これが無いために、旧型からの乗り換え需要はないのでは、といわれています。
わくわくゲートは、ハッチバックが、跳ね上げ式だけではなく、一部が横に開けられるドアになっています。詳しくは、こちらをご参照ください。
この構造のために、後ろに空間がなくとも、わずかな隙間があるだけで、物を出し入れすることができます。
もっといえば、わくわくゲートを使っていると、ハッチバックを跳ね上げて全開することはほとんどありません。
そんな便利なものだけに、どうしてこれを新型に採用しなかったのか、という思いでいます。
わくわくゲートは特に女性に好評です。私の妻も気に入っており、本人は動かなくなるまで乗り続ける、といっています。
ただ、わくわくゲートは、構造的に問題があります。
普通の跳ね上げ式ではないので、非常に重いのです。そして、構造が複雑な分、故障すると修理するのが大変なようです。なにより、製造コストがかかるといわれています。
こういった理由が考えられるので、新型に採用しなかったのは仕方がないか、と思っていました。
ただ、採用しなかったのには他の理由もあるようです。
というのも、わくわくゲートは、利用している人にとっては便利なのですが、利用していない人、すなわち、ミニバンの購入を検討している人にとっては、なにも響かないようなのです。
それだけではなく、わくわくゲートがあると、構造的にハッチバックに縦の線が入ります。これが受け入れられない見込み層が多数いるのです。
実際、我が家でも、購入前は、「デザイン的に、あの線はないなぁ」と言っていたぐらいです。
買い換え前にもステップワゴンに乗っており、乗り心地や安全機能が充実していたので、デザインには目を瞑って購入を決めたのを覚えています。
というような具合なので、わくわくゲートのついたステップワゴンは大苦戦。
ライバル車である、トヨタのノアやヴォクシーに完敗していました。
そこで、とったホンダの戦略は、使ってみると便利だけれど、使っていない人には訴求できず、むしろデザイン的にマイナス面のあるわくわくゲートを捨てて、ライバル車と同じような普通のハッチバックを採用する、というものでした。
ミニバンを検討する層に対して、これまでデザイン面で候補にすらならなかったものを、候補に入れてもらえるようにしたのです。ライバル車と同じ土俵に乗った、ということです。
一方で、先にも述べたように、厳ついフロントマスクを見直して、四角を基調とした昔なじみのエクステリアになっています。
グリルが大きく厳つい表情のノア、ヴォクシーを選ぶか、はたまた落ち着いた雰囲気のステップワゴンを選ぶか。消費者に選んでもらおうと考えているのだと思います。
ノア、ヴォクシーも新型が出ていますので、新型ステップワゴンがどこまで迫れるかはわかりません。
ただ、話を聞いた限りでは、新型ステップワゴンはかなり好評のようです。
我が家は当分、旧型を乗り続けるのでしょうが、新型ステップワゴンの行く末は少し気になります。
■ ■ ■
他社製品にはない、尖った部分が大き過ぎると、その部分が目立ち過ぎて、選択から漏れてしまうということがあるのでしょう。
その場合は、その部分を捨てて、別の部分で勝負をする、ということも重要なようです。
そもそも消費者の選択肢に入らなければ、売れるはずがないので、メリットだと思っていた部分を改めて見つめ直すことも必要なようです。
弁理士 森本 敏明
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