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【検証】VR上で特許明細書が書けるのか(2)

VR上で仕事ができるのか、試してみました。

ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の選定といっても、実際には決め打ちでした。

購入したのは、「Meta Quest Pro」。

現在入手できるHMDの中では、比較的高性能なものになります。

性能の悪いものを購入して、やっぱりHMDでは仕事ができないとなった場合、そもそもVRで仕事環境が構築できないのか、それとも使用したHMDが悪いのか、判断するのは難しいと思いました。

そこで、これを使って仕事環境が構築できないのであれば諦めがつく、ということでQuest Proを選んだのです。

■ ■ ■

Quest Proが手許に届いたところで、Quest ProとPCにimmersedをインストール。

問題なく、VR上にPCの画面が映し出されます。

Quest ProとPCはWifi経由で接続できますが、USB-Cケーブルを使っても接続可能です。

USB-Cケーブルを使うとLatency(遅延)が小さくなりますが、これはWifi環境にも依るのでしょう。

今使っている環境でのLatencyは、Wifi接続で8ms、USB接続で4msほどです。

物理ディスプレイほどではありませんが、いずれも気にならないレベルです。

VR環境としては、60~100インチほどのスクリーンを正面に置いて、その上と右上に40~60インチほどのスクリーンを置いています。

追加であと2面置くことができますが、いまのところその必要がないですし、なによりスクリーンの数を多くするとLatency(遅延)が大きくなる可能性があります。

スクリーンを正面から上側に置くことで、顎を上げてやや見上げるようにして作業ができます。

ノートPCで作業するときは頭を下げて画面を見ることになるのですが、この姿勢は肩凝りの原因になります。ノートPCの難点ですね。

HMDを使うとこれを解消することができ、首や肩への負担が軽減しますし、少し新鮮な感じがします。

なお、このような姿勢を保つために、椅子の背もたれを下げることになります。結果として、比較的リラックスした体勢になるのかもしれません。

このような姿勢にするもう一つの理由は、HMDの重さにあります。

単純に正面をみたり、首を下げる姿勢はHMDの重さが感じられて、首や肩の負担になります。

見上げる姿勢にすると、これが解消されて、HMDの重さの感じ方も改善されます。

さて、肝心のVR上で仕事ができるのか、という問いへの回答ですが、これは「Yes」です。

前回の記事では、VRについては、VR内のスクリーンで文字が読めるのか(識字性)、仕事に集中できるのか(没入性)、VR酔い・頭痛はしないのか(不快感)に疑問があると述べました。

まず、識字性について。

これは問題なかったです。

例えば、スクリーンを画面の端から端までを見えるサイズにしたとしても、十分に文字を読むことができます。

物理ディスプレイと比べるとさすがに劣りますが、画面は明るいですし、コントラストも良好なので文字の滲み等はありません。

Quest Proは眼鏡をかけたままでも装着できます。

ただ、眼鏡をかけたままだとやはり煩わしいので、視力補正用レンズをQuest Proのレンズにはめ込んで使用しています。このようにすれば、見え方としては、眼鏡をかけて装着するのと差異はありません。

一方で、HMD特有の粒々感というか、ざらざらとした感じはどうしてもあります。

物理ディスプレイに目を近付けるとドットが見えるのと同じような感覚です。

ただ、これは文章を書いたり、ウェブを参照したりする分には問題ないレベルです。

没入性は、やはりあります。

これは物理ディスプレイよりも優れているかも知れません。

外部視界情報を限定することにより、仕事に集中できます。

気が付くと、30分、そして1時間が過ぎていた、ということがよくあります。

不快感はなによりHMDとVRへの慣れが必要なのでしょう。

Quest Proはやはり重い。

これよりも軽くなるであろうQuest3の詳細が9月に発表されるということがアナウンスされています。内容次第ではこれがHMDの本命になるのかもしれません。

先ほど上を見上げながら作業ができるので首肩への負担が軽減されるといいましたが、それでもHMDの重さを感じます。

装着時の圧迫感も不快感に繋がります。

Quest Proの場合は額と後頭部で挟み込むようにして支えるのですが、見上げて作業するので額への圧力が強くなります。

そこで、これを軽減するために、ヘッドストラップをつけています。

これによりHMDを頭頂部と額で支えるようにして、後頭部での接触はほとんどないようにしています。

こうするとかなり快適で、長時間の装着も可能になりました。

とはいえ、疲れたな、と思ったらすぐに外すようにしています。

おそらくQuest Proに限らず、他の最近のHMDも同様だと思いますが、装着から復帰までの時間が非常に短いので、気軽に着けたり外したりできます。

装着する度に設定し直さなければならないという煩わしさはありません。テクノロジーの進化を感じますね。

外部からの光の入り具合、つまり、遮光性については、思ったより気になりません。

物理ディスプレイは現実の空間中に置いてあるわけなので、VR中のディスプレイも外の世界と繋がっていた方が良いのでしょう。

様々なプレイルームが用意されているのですが、VR空間を意識し過ぎる背景は止めた方がいいのかもしれません。

今は宇宙空間の中で作業をしています。やろうと思えば、宇宙船、雪山の山小屋、近未来世界などで作業することが可能です。PCの壁紙を変える感覚ですね。

自宅のリビングで使用するときはパススルーで使用しています。

家族がTVをみていると、ぼやけてはいるのですが、同じようにTVをみることができます。

Apple Vision proはより鮮明に見えるようになるのでしょう。

■ ■ ■

結論として、VR内での仕事環境を構築できました。

PC性能については、ある程度は影響すると思いますが、処理はHMD側で行われますので、それほど依存しないと思われます。

タイトルでもある、VR上で特許明細書が書けるのか、というと、書ける、というのが回答になります。

ただ、向いているのは、PCのスクリーン上で完結する業務でしょう。

翻訳、調査の業務が向いていると思います。

現在のところは、HMDを使って毎日1~2時間程度の翻訳業務を行っています。

翻訳の量と時間を計測しているのですが、今のところは物理ディスプレイ、VRディスプレイの間で差異は感じません。

ディスプレイを使って仕事をしている点では共通していますからね。

ちなみに、この投稿もVR上で書いています。

会社で複数のディスプレイを使っていて、自宅でも同じ環境で作業をしたいという人は、HMDの使用は選択肢の一つに考えてもいいのでないでしょうか。

 

弁理士 森本 敏明

To the NEXT STAGE ~知的財産を活用して次なる段階へ~

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