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【政】 知的財産からみるFTA戦略

日本のこれからの対外貿易政策に注目が集まっています。先日の日中韓の首脳会談でも、これらの国々におけるFTA(自由貿易協定)の動向について、新聞各紙で取り上げられていました。

FTAについては、とかく関税の撤廃や農作物が対象に入るか否かが盛んに議論されています。その反面、知的財産分野についてはあまり触れられていない印象があります。

知的財産分野について触れられるとしても、海賊版対策をどうするかなど、FTAとは本質的には関係のないことばかり報道されているように思います。しかし、貿易を自由化する上では、知的財産制度を棚上げして議論するなんてことは到底あり得ません。むしろ、貿易の自由化は、知的財産制度をベースに議論しなければ難しいのでないでしょうか。当然のことながら、世界各国の特許法は多少なりとも相違しているからです。

日本の特許法はイギリスの特許法(専売条例)が基になったとされています。しかし、その後、日本では独自の法改正が積み重ねられ、今の特許法は原型から大きく変容しています。そして、韓国の特許法。少し前までは、日本の特許法に似ているといわれてきました。ところが、韓国は米国とFTAを結ぶことになり、米国寄りの特許法へ改正するに至りました。その結果、韓国の特許法は、日本のものとも、米国のものとも、どちらともいえない独自の法制度となったのです。中国の特許法もまた、独自の法制度となっています。

新聞などによれば、日中韓のうち、韓国と中国との間でまずFTAが結ばれるのではないかとの報道が目立ちます。この報道を見て、「知的財産制度については、どのように整合をとるのだろう?」という疑問が湧きます。具体的な話し合いはこれからでしょうが、中国は多少なりとも韓国の法制度とすり合わせるのでしょうか?大変興味があります。韓国としては中国とFTAを結ぶことができれば、GDP世界第1位の米国に続き、第2位の中国との貿易自由化を成し遂げられます。当然、アジアの中でのプレゼンスが高まるでしょうし、今後第3位の日本に対して優位に交渉を進められるかもしれません。これは、日本にとってすれば芳しくない状況なのではないでしょうか。

この状況に日本は遅れずについていく必要があります。三カ国で締結できればベターでしょうが、それが適わないとしても、韓国に先んじて中国とFTAを締結したいものです。知的財産制度に関していえば、韓国は米国との関係から、中国の法制度とすり合わせるのは難しい。その点、日本はまだ柔軟性があります。中国の意見を聞く余地があるように思います。両者にとってWin-Winとなるような法改正も考えられるでしょう。

ちなみに、FTAと同じく、TPPについても議論が盛んにされています。厳密には違うのでしょうが、TPPはFTAの拡大解釈版とでもいえるのでしょうか。 個人的には、日本がTPPに加わるのは、あまりにも乗り越えるべき障壁が多いように思います。そこで、日本は中国とのFTAを優先し、その後(または並行して)、米国とのFTAを模索するのが現実的ではないかと考えています。

このように、FTAやTPPなど、今話題の経済ニュースについて、知的財産というフィルターを通してみると、なかなか興味深いものがあります。

弁理士 森本 敏明

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