【数】 我が国のライフイノベーション政策
特許庁のウェブサイトに興味深い調査結果が載っています。「グリーンイノベーション分野、ライフイノベーション分野の特許出願状況」(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/toukei/green_life.htm)というものです。
調査の目的は、「我が国が目指すべき研究開発の方向性の策定や、知的財産の権利化を促進するための基礎資料として活用すること」にあるといっています。そして、「我が国が目指すべき研究開発」というのは、「第4期科学技術基本計画」において、重点的に推進(ウェブの「推定」という単語は間違いですね。)されるべきとされている「グリーンイノベーション分野」と「ライフイノベーション分野」の研究開発を指すのでしょう。
グリーンイノベーション分野の技術というのは、端的にいえば環境・エネルギー分野の技術ですね。ライフイノベーション分野は医薬、医療、バイオ分野の技術です。どちらも弊所が取り扱っている分野の技術でありますが、とりわけ、ライフイノベーション分野の技術を得意としております。
ウェブサイトでは、これらの分野が関連する技術について、出願人国籍別特許公開件数を日米欧中韓での特許公開公報に基づいて集計しています。注目していただきたいのは、「2-2.ライフイノベーション関連技術の出願人国籍別特許公開件数」です。日本国籍の特許出願がいかに少ないかがおわかりいただけますでしょうか。それに対して、グリーンイノベーション関連技術については、日本国籍の特許出願の多いこと。発電施設を外国に輸出しているほどなのですから、日本のグリーンイノベーション関連技術は確かに他国の技術と比べて高度なのでしょう。
では、グリーンイノベーション関連技術に対して、ライフイノベーション関連技術の日本国籍特許出願はなぜ少ないのでしょうか? 理由は色々と考えられるのでしょうが、その一つに「規制」が挙げられると思います。医薬品や医療機器について、たとえ特許が取得できたとしても、製造販売するには厚生労働省((独)医薬品医療機器総合機構)の承認が必要です。換言すれば、承認を受けられる体力のあるところでないと、医薬品や医療機器を商品として商売するのは難しいのです。
新たな技術を発明したとしても、その発明に基づいてすぐには商売できない。そうであれば、すぐには商売にならない発明を創作しようとはそもそも思わないかもしれません。ライフイノベーション関連技術を推進したければ、現存の規制をどうにかするしかありません。特に、特許権は特許庁(経済産業省)の管轄、医薬品・医療機器の承認は経済産業省の管轄と、それぞれ管轄する行政庁が異なります。もちろん、特許権の取得と医薬品・医療機器の承認とは、直接関係がありません。リンクしていないのです。したがって、この辺を一体的に改革しなければ、ライフイノベーション関連技術の特許出願数を伸ばすのは難しいように思います。ライフイノベーション関連技術を得意とする事務所としては、歯痒いところです。
その他にも、日本の研究評価のあり方や、日本の大学の現状などにも問題がありそうです。こられの点については、改めて別の機会に。
弁理士 森本 敏明
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