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【考】 技術の流出問題

日経ビジネス7月9日号の特集は、「産業スパイ」でした。

モリモト特許商標事務所記事の中で最も興味を感じたのは、松枝氏の体験談。松枝氏は、国内メーカーに勤務した後、サムスンへ。その後、別の国内メーカーへ就職を希望したようですが、願いが叶わず。現在は台湾メーカーにて勤務しているようです。

松枝氏の体験談を読んで強く感じることは、産業スパイ問題は、けっきょくのところ、人材流出問題なのであって、単なる技術データの受け渡しに基づくものではない、ということ。換言すれば、産業スパイ問題は、雇用問題といえるのではないか、と思うのです。

また、記事の中では技術流出対策がいつくか提案されています。その中に、「外部に公開しても構わない技術は、特許として申請する。」という文章があります。しかし、そもそも外部に公開しても構わない技術なんてあるのでしょうか? また、そのような技術を特許にしたとして、どんな価値があるのでしょう。自社、そして競合他社が使いたがる技術(発明)を特許にするのが基本です。以前にも書きましたが、他者が使わないものについて「権利」を主張することは、一人しかいない無人島で一本の木について所有権を主張することと一緒です。

私の見解としては、守りたい技術は特許にすべきです。特許にならない技術については、そもそも秘匿する必要があるのか、という問題があります。また、守りたい技術を都度特許にしておけば、人材流出を招いたとして、その人が持っている技術は特許出願されているわけですから、流出先にはその人の過去の技術について期待することはできず、将来性に焦点を当てなければならないようになります。少なくとも産業スパイ問題は解消されるでしょう。

技術情報を守るために、1人の技術者にノウハウを集中させないということも、確かに一つの手ではあると思います。しかし、技術者は、物を考える人間である以上、1つのノウハウを知得していれば、世の中に溢れる情報から製品を作るためのその余のノウハウを補完することができるでしょう。

最後に、日本国内の公知技術の情報・経験を他国の企業に伝達する技術者を産業スパイとみる節があります。これは、いくらなんでも行き過ぎでしょう。見るより聞いた方が早いのは常識ですから。

弁理士 森本 敏明

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