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【特許】記載要件の判断基準

 

記載要件の判断基準を教科書的に説示した裁判例の紹介です。

 

今回紹介する事件の番号は、令和2年(行ケ)第10033号。日本水産株式会社vsビーエーエスエフ アーエスの事件です。

明確性要件、実施可能要件及びサポート要件の判断基準が以下のとおりに説示されています。

【明確性要件】
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断するのが相当である。
【実施可能要件】
発明の詳細な説明の記載が,実施可能要件に適合するか否かは,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,その発明を実施することができる程度に発明の構成等が記載されているか否かによって判断するのが相当である。
【サポート要件】
特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するのが相当である。

ポイントは太字で示したとおりです。

よくある間違いとしては、判断の主体を「出願時の当業者」としてしまうところですかね。

正しくは、現在の「当業者」です。

記載要件は、現在の当業者が出願時の技術常識を参酌して判断されるというつくりになっています。

裁判例自体は、いろいろと勉強にはなりますが、判断内容に大きな驚きはありません。

強いていえば、本件特許明細書に「WO 2004/007654に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる」とだけ記載されている事項について、判決文では引用されたWO公報の記載の内容が正当に採用されたことでしょうか。

上記の記載は、Incorporation by referenceという表現です。

米国向けの特許明細書に記載するものですが、欧州の審査官には嫌われる表現です。このような記載を日本語明細書でも採用すべきか否かはケースバイケースでしょう。

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弁理士 森本 敏明

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